行動する

気候正義を求めて

世界の若者は、気候変動問題の背景に「不正義」があることを認め、それを正すことを求める「気候正義」を掲げ、パリ協定の1.5℃目標に整合するよう、科学に沿った対策強化を求めて、声を上げています。CASAは若者主導のこのムーブメントを支持し、大阪で活動するFFF Osakaの活動をサポートしています。

写真1  2019年3月15日、京都で行われた「グローバル・スクール・ストライキ」。京都市役所前を出発する気候マーチ

2018年に始まったムーブメント

若者主導のムーブメントのきっかけとなったのは、当時15歳だったグレタ・トゥーンベリさんがたった一人で始めた「気候のための学校ストライキ」でした。それは2018年8月に始まり、SNSなどを通じて彼女の行動に共感した若者たちが、彼女と同じように学校を休んで街を行進(マーチ)するようになりました。毎週金曜日にアクションをしたことから「未来のための金曜日(Fridays For Future, FFF)」などと呼ばれる世界的なムーブメントに発展し、欧州では数万人規模の気候マーチが取り組まれるようになっています。

2015年に採択されたパリ協定で、世界は、平均気温の上昇を工業化前に比べて2℃を十分に下回ること、1.5℃も目指すことに合意しています。しかし、各国が国連に提出している排出削減・抑制目標(NDC、国別約束)では、1.5℃はもちろん、2℃に抑えることもできないことが分かっています。

2018年10月にIPCCが公表した「1.5℃特別報告書」は、工業化前からの平均気温の上昇が1.5℃の場合と2℃の場合の影響を比べ、たった0.5℃の差しかないものの両者には大きな違いがあることを明らかにしました。世界の平均気温は、人間活動によってすでに約1℃上昇しており、現在のペースで排出量が増加し続けると、2030年から2052年の間に1.5℃上昇に達すると予測しています。1.5℃未満に抑えるための排出経路については、2030年までの対策が決定的に重要だとし、2030年までにCO2排出量を2010年比で約45%削減、2050年頃までにほぼ「正味ゼロ」にする必要があるとしています。さらに、1.5℃未満は、2030年よりも十分前に、世界全体のCO2排出量が減少し始めることによってのみ実現できるとしています。つまり、2030年までの対策が決定的に重要であるとしているのです。

こうした状況でグレタさんたち若者が、このまま温暖化が進行した場合に、より深刻な影響をこうむる当事者として、科学が予測する最悪のケースを懸念し、政府に今すぐ対策を強化するよう求めたことは当然のことのように思います。グテーレス国連事務総長は、「我々世代は、気候変動問題に適切に対処することに失敗してきた。若者の怒りは無理もない」と述べ、若者たちの行動に強い支持を表明しており、国際的な科学者グループ「Scientists for Future International」も、声明「抗議する若者たちの懸念は正当である」を公表し、若者たちの運動への支持を表明しています。

2019年2月、日本でも若者がFFF Japanのバナーを掲げ、約20名が国会議事堂前に集まり、集会を開きました。その後、2019年3月15日には東京、京都で「グローバル・スクール・ストライキ」が取り組まれました。京都で行われた「グローバル・スクール・ストライキ」は、関西在住の大学生が中心になって実現したもので、当日は、グレタさんと同じ年頃の高校生や、京都市内のインターナショナル・スクールに通う10~11歳の子どもたちが先生と一緒に参加したほか、若者の行動に支持を示そうとおとなたちの姿もありました。インターナショナル・スクールの子どもたちは、ちょうど気候変動をテーマに学習していたそうで、先生が京都でこのアクションがあることを教えてくれ、みんなで話し合ってアクションに参加することを決めたと話していました。

その後、国内各地にFFFが結成されていきました。2019年9月には、グレタさんら若者が、全世代に参加を呼びかけた「グローバル気候マーチ」が開催されました。2019年9月20日(金)から27日(金)までの8日間、世界で760万人を超える市民が参加する歴史的な大成功を収めました。この期間、世界185カ国で、6,100件以上にのぼるアクションが開催され、学生、保護者、労働組合、企業、医療関係者、科学者、著名人など、年齢も職業もさまざまな市民が参加しました。日本国内では9月20日(金)にグローバル気候マーチが行われ、23都道府県で5,000人を超える市民が参加、大阪では300人が参加し、大成功を収めました。

写真2 2019年9月20日、大阪のグローバル気候マーチより(©Fridays For Future Osaka)

気候変動問題には不公平、不正義が存在しています。たとえば、気候危機の容赦ない影響にさらされているのは、原因となる温室効果ガスをこれまでほとんど排出してこなかった小島しょ国や、アフリカ諸国、後発開発途上国など、気候変動がもたらす悪影響に脆弱な国に住む人々であり、世代で言えば、若者、子どもたちです(表1)。

表1 気候正義を考える

若者は、こうした「不正義」を正すことを求める「気候正義」を掲げ、パリ協定の1.5℃目標に整合するよう、科学に沿った対策強化を求めています。