おわりに |
本報告書の課題は、1)利用可能な各種の二酸化炭素排出削減技術の導入促進をはかった場合、2010年までにどれくらいの二酸化炭素排出削減が可能であるかを評価・分析し、それに基づき、2)さらに適切な水準まで排出量を削減するためには、どのような政策オプションの導入が必要なのかを明らかにすることであった。
本研究では、今後新規の対策が何もとられない「現状推移ケース」では、2010年までに二酸化炭素排出量は1990年比で24.7%増加し、各種二酸化炭素排出削減技術の導入促進がはかられる「技術対策ケース」でも、2010年時点の二酸化炭素排出量は1990年比で6.5%の削減にとどまることが明らかとなった。
しかし一方、本研究では、生産量・消費量・交通量・廃棄物量などの活動水準を現状から維持・抑制し、太陽光発電・風力発電などの導入を推進すれば、二酸化炭素排出量を大幅に削減できる可能性があることも明らかとなった。例えば、現状から見ても十二分に実現可能性の高い「1995年活動水準維持ケース」でさえ、2010年には1990年比で20.3%の二酸化炭素排出削減が可能である。
このことは、現行の「地球温暖化防止行動計画」等を抜本的に見直し、利用可能な各種二酸化炭素排出削減技術の導入促進と適切な政策オプションが選択されるならば、将来、二酸化炭素排出量を大幅に削減できることを示唆している。本研究においては、技術導入を促進する政策と措置、および、各政策オプションを実行するために必要な対策のメニューについても考察されており、同計画の見直しの際等に検討すべき各分野での具体的施策に関する一つの提言ともなっている。
本報告書は、先述の目的とフレームワークの中で行われた研究であり、各種二酸化炭素排出削減策の導入および政策オプションの実行が日本経済へ与えるインパクト(GDP、雇用量、産業構造、国際貿易等へのインパクト)、炭素税の導入効果の検討(本研究では、炭素税導入の効果を上げるためには、現行のエネルギー税・財政制度の歪みをまず是正することが必要であることを指摘した)、対策財源の調達方法、国際貿易を通じた二酸化炭素排出の国際移転問題(カーボン・リーケージ問題)の考察など、現段階では研究の対象としなかった多くの重要な問題も存在する。これらの問題は、今後のPhaseU以降の段階に置いて、順次研究を進めていく予定である。