Y. 廃棄物処理部門 |
(1)廃棄物処理部門からのCO2排出の状況
廃棄物処理部門からのCO2排出のうち、一般廃棄物の焼却のシェアが最も大きく、71%を占める。次いで汚泥の焼却で、12%を占める(1990年度)。
廃棄物処理部門からのCO2排出は増加傾向にある。(1990年度1,200万t →1995年度1,300万t:8%増)
* 1995年度から廃棄物処理部門のCO2排出量の計算方法が変更され、バイオマス関係(厨芥、紙くず、木くず、繊維くず、汚泥等)の焼却によるCO2排出量が計上されなくなった。しかし、この方法では、木材資源等の長期利用やリサイクル、食べ残しをなくすこと等が評価されない。ここでは、バイオマス関係の排出量も含まれている1994年度までの計算方法を用いることとする。
(2)廃棄物処理部門におけるCO2排出量増大の原因
ごみ発生量は、産業廃棄物・一般廃棄物とも一貫して増加傾向にある。
産業廃棄物においては、汚泥・動物の糞尿が顕著な増加傾向にあり、可燃性の廃油・廃プラ・木くず・紙くず等も増加している。一般廃棄物では、事業系ごみが増加傾向にあり、中でもOA化に伴う紙ゴミ等の増加が見られる。また、家庭系ごみにおいては、ペットボトルや食品トレー、商品の容器包装に伴う紙ごみ、プラスチックごみの増加が見られる。
一般廃棄物においては、その焼却量(率)が増加している。
産業廃棄物においては、汚泥の再利用率が極めて低い(4%)。
(3)ごみ発電によるCO2排出削減の可能性
ごみ発電を事業用発電に代替させるという考え方に立つと、CO2排出削減効果は0.171tC/MWh(1990年の商業電力の二酸化炭素排出原単位を使用)となる。
高温・高圧化ごみ発電により、発電効率を従来のごみ発電の2倍(20%程度)以上とすることが可能で、CO2排出削減効果も2倍にできる。
●ごみ発電普及の可能性
<一般廃棄物>
更新・新規建設される全連続式焼却施設数は、1990〜96年の平均的ペースが今後も続くとして、1年あたり17基、焼却能力5,000t/日とする。
2001〜10年に更新・新規建設される全連続式焼却施設(170基,焼却能力50000t/日)すべてに高温・高圧化ごみ発電を導入する。
→発電量: 9,535,260Mwh、CO2排出削減効果:163万t
<産業廃棄物>
2010年までに、紙屑・廃プラを焼却するごみ発電施設を15基(50t/日×10基,100t/日×5基)、混合廃棄物を焼却するごみ発電施設を17基(100t/日×17基)導入する。
→発電量:447,636 Mwh,CO2排出削減効果:7.7万t
(4)ごみ発電の導入を促進するための政策と措置
全連続式の焼却施設におけるごみ発電の義務化
焼却による廃熱を有効に利用するため、全連続式の焼却施設を更新・新規立地する場合には、高温・高圧化ごみ発電を義務化する。
ごみ発電への補助金の増額
ごみ発電の効率化を推進するため、ごみ処理施設を温暖化防止・資源活用等の観点から評価し、国庫補助を1/2に増額するとともに(現行1/4)、売電部分のごみ発電施設も特別地方債の起債対象とする。
ごみ発電電力の購入単価の引き上げ
ごみ発電電力の電力会社による購入単価を、売電価格の75%に引き上げる(現行50%以下)。
*ドイツでは、廃棄物から生産される電力については、最終消費者への売電価格の75%(500kWを超える部分については65%)以上で電気事業者が買い取るよう定められている。
ごみ燃料(RDF)プラントへの支援
RDFプラント設置に際しての基準を早急に定め、上記(2)と同等の補助をするとともに、RDF を用いて発電された電力についても、上記(3)と同等の購入価格を維持する。
産業廃棄物ごみ発電への補助
産業廃棄物の焼却においてもごみ発電を積極的に進めるため、上記(2)に準ずる支援措置を講ずる。
また、産業廃棄物の焼却施設を統合し、規模を拡大することで、ごみ発電を容易にするための誘導措置を講じる。
(5)技術の導入コストに関する試算
一般廃棄物ごみ発電設備投資額:3,888億円(170基,焼却能力50,000t/日)
産業廃棄物ごみ発電設備投資額:178億円(15基,焼却能力50t/日×10基,100t/日×5基)
(6)対策技術を最大限導入した場合に削減可能なCO2量
●シナリオの設定
シナリオ0: | ごみ発電技術の新規導入が行われず、かつ、2010年の一般廃棄物量が1990年レベルから19%増加し、2010年の産業廃棄物量が1990年レベルから49%増加するケース(現状推移シナリオ) |
シナリオ1: | ごみ発電技術の新規導入が行われるが、2010年の一般廃棄物量が1990年レベルから19%増加し、2010年の産業廃棄物量が1990年レベルから49%増加するケース(技術対策シナリオ) |
シナリオ2: | 2010年の一般廃棄物量が1990年レベルから10%増加し、2010年の産業廃棄物量が1990年レベルから25%増加するケース(廃棄物量の増加率半減シナリオ) *一般廃棄物量・産業廃棄物量についての最新年のデータは1993年値であるが、1993年の廃棄物量は一般廃棄物量・産業廃棄物量とも1990年より小さいため、ここでは、現状推移シナリオで予想される1990年〜2010年の廃棄物増大率の半分の増大率を設定した。 |
シナリオ3: | 2010年の一般廃棄物量・産業廃棄物量が1990年レベルに抑制されるケース(廃棄物量1990年抑制シナリオ) |
シナリオ4: | 2010年の一般廃棄物量が1990年レベルから15%減少し、2010年の産業廃棄物量が1990年レベルから35%減少するケース(廃棄物量削減シナリオ) |
(7)廃棄物抑制・リサイクル促進のための対策メニュー
A 容器包装リサイクル法の改正
事業者責任(生産物責任)の強化
1997年より施行された容器包装リサイクル法は、容器包装材の発生を抑制するために定められたが、ドイツ・フランス等のシステムに比較し、事業者の責任分担が軽いものとなっている。特に分別収集・保管等の費用が地方自治体の負担となっている点は問題であり、もっとも繁雑な作業を伴うこの部分に事業者の責任が課せられなければ、分別収集を行いやすい素材の開発、容器包装の減量などのインセンティブとはならない。
*ドイツ・フランスにおいても、既存の自治体の収集システムを有効に活用している。日本でも、フランスと同等以上のシステムを導入することが可能であろう。
*東京においては、ペットボトルの回収を事業者が負担するように求めた「東京ルール」が提唱されている。
リサイクルの数値目標の制定
現状の容器包装リサイクル法では、リサイクル率に関する規定がない。年度ごとの数値目標を明確にして取り組むべきである。
*ドイツにおいては数値目標が掲げられており、2年間でごみ処理量は5/6に減少した。プラスチック容器についても当初は国外へ流出するなど問題もあったが、最近では順調にリサイクルが進んでいる。
容器包装の範囲の拡大
現状の容器包装リサイクル法では、サービス用の容器包装(宅急便の段ボールやクリーニングの袋など)が対象から外れている。これらも対象に含めるべきである。
B. リサイクル法の改正
再生資源業者への支援
現状のリサイクル法においては、再生資源業者・解体業者等の法制上の位置付けがなく、こうした業者の能力を向上させるための支援措置がない。こうした業者を育成するための支援措置を盛り込むべきである。
指定業種、指定製品の範囲の拡大
指定業種、指定製品の範囲を拡大すべきである。
リサイクルの数値目標の設定
具体的な目標がなければ、リサイクルは進まない。数値目標の策定が早急に求められる。
C .ごみを出さない行動
グリーンコンシューマー(緑の消費者)運動
包装の少ない商店で買い物をする、過剰包装を断る、買い物袋を持ち歩く、無駄な買い物をしない、リサイクルショップを活用する、などの市民レベルの活動が重要である。
*容器包装材は容積比で一般廃棄物の6割を占める。これを減らすことで大きな廃棄物削減ができるとともに、製造段階でのエネルギーも削減できることになる。例えば、紙容器0.89Gcal/t、ペットボトル6.92Gcal/t、スチール缶4.48 Gcal/t、アルミ缶33.96 Gcal/t。
ゼロエミッションに向けた企業活動
ごみを出さない活動、すなわち資源の有効活用は、企業の経費節減につながる場合が多い。アサヒビールなどは自ら「ゼロエミッション」を宣言し、企業内での活動を行っている。ISO14000シリーズへの対応も視野に入れれば、企業活動にかかわるごみの減量対策を企業自ら推進する必要がある。