V. 民生業務部門

 

(1)民生業務部門からのCO2排出の状況

  1. 民生業務部門でのCO2排出を用途別に見ると、動力・照明が52%と大きく、暖房が19%、給湯が17%となっている。

  2. 用途別では、動力・照明によるCO2排出量の増加が著しい。また燃料別では、石油の消費量は80年代より安定している一方、ガス・電力の伸びが著しい。

 

(2)民生業務部門におけるCO2排出増大の原因

  1. パソコン、ファックスなどのOA機器・情報通信機器の普及による動力需要が増加した。

  2. 第3次産業への就労者人口が増加する一方、OA化の進展による床面積増大が進んだ。

  3. 小売業の大規模化がすすみ、コンビニエンスストアに象徴されるように、営業時間が長くなった。

  4. エネルギー価格の低下による省エネ努力の停滞。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. 民生業務部門におけるCO2排出削減の技術的可能性

 

 

4. 対策技術の導入に必要なコスト

 

 

5. 対策技術の導入を促進するために必要な政策と措置

(1)一般の事務機器のエネルギー効率改善の強化

・省エネ法により指定される事務機器の種類を増やす。既に指定されている事務機器についても、現行最高水準の機器の効率を参考に、省エネ基準を強化する。

(2)新設建物の省エネビル化の義務づけ

・省エネ法により建物の断熱等について基準が設定され、「省エネルギー計画書」の提出も求められているが、形骸化している。提出がない場合には、建築主事による確認を受けられないこととして、その運用の強化を図る。

・建物の断熱性などの省エネ基準を強化する。

(3)行政による率先実行

・国や地方自治体による率先実行を確実とするため、建築物・事務機器の入札条件に省エネ基準を設定する。

 

6. 対策技術の導入促進をはかった場合に削減可能なCO2排出量

●シナリオの設定

 シナリオ0:各種省エネ技術の導入が行われず、2010年の業務用床面積が1990年に比較して58%増加、床面積原単位が1990年比で平均1%増加するケース。(現状推移シナリオ)

 シナリオ1:各種省エネ技術(飲料用自動販売機も含む)の導入が行われるが、2010年の業務用床面積が1990年に比較して58%増加、床面積原単位は1990年比で平均1%増加するケース。(技術対策シナリオ)

 シナリオ2:2010年の床面積および床面積原単位が1995年水準に抑制されるケース。(1995年活動維持シナリオ)

 シナリオ3:2010年の床面積および床面積原単位が1990年水準に抑制されるケース。(1990年活動抑制シナリオ)

 シナリオ4:床面積あたりのエネルギー使用量が1990年レベルから10%削減され、さらに、少子化・高齢化により1990年に比べ床面積が学校で19.4%減少、その他で5.5%減少する。また、2010年における自動販売機台数(258万台と想定)を約30%削減する。(抑制強化シナリオ)

 

 

 

 

 

7. 業務部門でのエネルギー消費削減策のメニューとその効果

(1) エネルギーを節約するサービスを提供する省エネルギーサービス事業(ESCO)の育成支援

*日本では、すでに商用利用段階にある技術のみを適用した場合でも、業務部門において17.3%の省エネが可能。既にアメリカでは40〜50のESCOが営業しており、省エネ機器等への投資額は年間4億5,000万ドル(1994年)にのぼる。[ESCO検討委員会「日本へのESCO事業導入に向けて」1996年12月]

(2) 省エネに関する情報の提示

・テナントビル等におけるエネルギーの使用量に応じた光熱費負担の設定

・新入居者にとって光熱費負担が比較できる形での省エネ情報の開示

*床面積あたりのエネルギー消費量をテナントビルとオーナービルとで比較すると、完全なテナントビルは平均的なビルよりも約8%多く、50%以上がオーナーのビルの場合は平均的なビルよりも約17%少ない。[(社)日本ビルエネルギー総合管理技術協会「ビルエネルギー使用合理化委員会報告書」1994年]

(3) 事業者間のネットワーク構築による地域熱供給システム導入の強化

(4) 活動時間の短縮

・残業時間の短縮

・小売業等での営業時間の短縮

・昼休みの長時間化

   *1995年における製造業生産労働者の年間総実労働時間は、日本の1,975時間に対し、フランス1,680時間、ドイツ1,550時間であり、それぞれ15%〜21% 日本よりも短い。[労働省編『平成9年版労働白書』1997年6月]

(5) 日照時間を有効に利用するためのサマータイム制の導入

   *サマータイム制を導入した場合、民生用照明・冷暖房などで石油換算55万キロリットル(32万世帯の1年分のエネルギー消費に相当)の省エネルギー効果を持つ(1992年度実績)。[(財)省エネルギーセンター、「平成7年版省エネルギー便覧」、1996年2月]

(6) 冷房温度の適温設定を視野に入れた夏用オフィスウェアへの変更

   *冷房温度を27℃以上に設定しているビルは、24℃以下に設定しているビルと比べて、年間約9Mcal/m2(電力二次換算値)エネルギー消費が少ない。これは1995年の業務用床面積原単位の3%(冷房用の42%)に相当する。[(社)日本ビルエネルギー総合管理技術協会「ビルエネルギー使用合理化委員会報告書」1994年]