IV. 民生家庭部門 |
(1)民生家庭部門からのCO2排出の状況
民生家庭部門からのCO2排出を用途別に見ると、1995年時点において照明・動力が42.8%と最も多く、暖房25.1%、給湯22.5%、厨房6.4%となっている。
厨房におけるエネルギー消費はほぼ横這いとなっているが(1985〜95年:5%増)、冷房(61%増)、照明動力(66%増)によるエネルギー消費は増加が激しい。
電力消費では、エアコンの21.2%、冷蔵庫18.1%、テレビの9.4%などの機材による消費が大きい。
(2)民生家庭部門におけるCO2排出増大の原因
単身世帯の増加や核家族化の進行によって、世帯数が増加している。
各種家電製品の普及や大型化、建物の全館空調化が進んでいる。家電製品については多機能化も進んでおり、そのための電力消費も多い。
夜型ライフスタイルが定着してきており、照明やテレビ等の利用が長時間化している。
パソコン通信やファックスなど情報化社会に向けた機器が急増している。
(3)民生家庭部門におけるCO2排出削減の技術的可能性
(別紙参照)
(4)対策技術を導入するために必要なコスト
対策技術をすべて導入した場合には、2000年から2010年までの10年間に11兆5,572億円のコストが必要と見込まれる。(別紙参照)
(5)対策技術の導入を促進するための政策と措置
建物の保温構造等に対する基準強化
省エネ法W地域(関東から東海・近畿・九州までの最も人口が多い地域)において、ペアガラスの導入が基準化されていないため、これを基準化させる。
高気密住宅やソーラーシステム設置に関して、順次、省エネ基準を設定していく。
住宅金融公庫の融資条件化
現行の省エネ法の基準は、住宅金融公庫の融資条件等に含まれていないために、自主的に採用するインセンティブが乏しい。省エネ住宅に対して融資条件や割増融資条件(融資限度額を上げるのに必要な条件)を設定することにより、省エネ化を促す。
補助金制度・優遇税制の活用
家庭において特にCO2排出削減効果の大きいソーラーシステムについて、費用の半額程度を補助する。
電気機器のエネルギー効率の向上にむけた基準・目標設定
エアコンや冷蔵庫等における近年の省エネ技術の進歩を視野に入れて、エネルギー効率基準の見直しを行う。順次基準を厳しくすることにより、現行での最高性能値を2010年における販売平均での目標とする。
エネルギー消費の非効率な機器に対する改善勧告・指導
エネルギー効率の特に悪い家電製品についてはリスト化を行い、製造者や販売者に対して定期的に提示し、改善を求める。
(6)対策技術の導入促進をはかった場合に削減可能なCO2排出量
●シナリオの設定
シナリオ0: | 各種省エネ技術の導入が行われず、エネルギー消費が2000年までは年平均で2.7%の増加、2000年から2010年までは年平均1.8%の増加するケース(現状推移シナリオ) *資源エネルギー庁総合エネルギー調査会の予測。 |
シナリオ1: | 各種省エネ技術の導入が行われるが、エネルギー消費が2000年までは年平均で2.7%の増加、2000年から2010年までは年平均1.8%増加するケース。(技術対策シナリオ) |
シナリオ2: | 2010年における各家庭のエネルギー利用機器の使用量を1995年レベルに維持するケース。(使用量1995年維持シナリオ) |
シナリオ3: | 2010年における各家庭のエネルギー利用機器の使用量を1990年レベルに抑制するケース。(使用量1990年抑制シナリオ) |
シナリオ4: | 2010年における各家庭のエネルギー利用機器の使用量を1990年時点に比べて30%削減するケース。(使用量削減シナリオ) |
(7)家庭部門でのエネルギー消費削減策のメニューとその効果
家庭での省エネの取り組み
冷房(暖房)の温度設定を1度〜2度高く(低く)する。
部屋暖房からこたつへの変更。扇風機の活用。
風呂の温度を42度から39度程度にする。
風呂を沸かすのでなく、シャワーで代用する。
ガス湯沸かし器の火種をこまめに消す。
テレビの視聴時間を1日1時間短くする。
掃除機のフィルター掃除の徹底。
照明時間の1日1時間の短縮。
冷蔵庫の適正容量を維持する。
*以上の取り組みを全家庭で行うことで、世帯あたりのCO2排出量の16%削減となる。
これ以上持たないという選択
*アンケートによると、各種家電製品が「必要不可欠」と答えたのは平均して3割程度。その他の人は「なくても生活できる」と回答している。[京都大学環境保全センター実施アンケート]
家庭エネルギー消費アドバイザー制度
各家庭のエネルギー消費について、改善できる点やそのための費用の相談など、公営による無料のアドバイザー制度を設置する。
サマータイム制の導入
*制度の導入によって、照明需要が1割程度削減される効果がある。[省エネルギーセンター「省エネルギー便覧」1997年]
エネルギー使用量を伝える政策
電力・ガス・水道等の料金明細書にエネルギー消費量を併記して、利用者に示す。特に消費量が多い家庭や急に増加した場合、個別にエネルギー消費量削減のためのアドバイスを付記して送る。
製品情報を伝える制度
消費者が選択をしやすいように、環境配慮型の家電製品に共通のラベルを添付する。