V. 運輸部門 |
(1)運輸部門からのCO2排出の状況
運輸部門からのCO2排出のうち、約9割が自動車からの排出である。自動車からのCO2排出を車種別にみると、自家用乗用車とトラック(自家用および営業用)がともに40%強を占める。
近年、自家用自動車と営業用トラックにおけるエネルギー消費が目立って伸びており、これらによるCO2排出が、運輸部門全体におけるCO2排出量を増大させている大きな原因になっている。
(2)運輸部門におけるCO2排出増大の原因
新規販売乗用車の燃費の低下:車両の大型化・大排気量化、自動変速機(AT)・パワーステアリング・エアコン・オーディオ機器などの普及、四輪駆動(4WD)車・レクレーショナルビィークル(RV)の販売シェアの増大などによる。
1989年度からの物品税の廃止と消費税の導入、および、自動車税の税率変更により、普通乗用車と小型乗用車との税負担格差が大幅に縮小した。
自動車走行量(道路交通量)の伸びは、1992〜94年度にかけて一時鈍化したが、傾向的には着実に増大している。
(3)運輸部門におけるCO2排出削減の技術的可能性
(4)対策技術の導入を促進するための政策と措置
省エネ法によるメーカー平均燃費基準の強化
全車種を対象にし、燃費向上率を引き上げる。また、乗用車の小型化を促進するため、乗用車には車両重量区分をしない。(現行の自動車燃費基準は、ガソリン乗用車とガソリン軽・軽量・中量トラックにしか設定されておらず、燃費向上率も低い。また、乗用車の燃費基準は車両重量によって3ないし6区分になっているため、大型化による販売車平均燃費の低下を容認してしまう形となっている。)
特定車種の販売義務化
電気自動車や電気-ガソリンハイブリッド車等の高燃費車を、2000年以降は全乗用車販売台数の20%、2005年以降は50%販売することを自動車メーカーに義務づける。
自動車保有・取得税制の改革
自動車の取得・保有にかかわる税(自動車取得税・自動車重量税・自動車税)の税率を、燃費を基準にした累進制とする。
高燃費車の購入への優遇措置
電気自動車・電気-ガソリンハイブリッド車等の高燃費車に対し、自動車取得税・自動車重量税・自動車税の減免税、あるいは、購入補助を行う。
(5)技術の導入コストに関する試算
ストック平均燃費の向上は、使用過程車を新車に更新することによって生じ、燃費向上技術の導入により特別なコスト増が生じるとは考えられない。むしろ、燃料費の節約によるコスト削減効果の方が大きいと考えられる。
高燃費車への減免税あるいは購入補助額は、1台当たり10万円程度で450万台分と想定すると、4,500億円(1995年度の自動車取得・保有関連税収の約13%)となる。
(6)対策技術を最大限導入した場合に削減可能なCO2排出量
●シナリオの設定
シナリオ0: | 各種省エネ技術の導入が行われず、かつ、自動車走行量が1990年比で40%増大するケース。(現状推移シナリオ) *建設省予測(第11次道路整備五カ年計画の附属資料,1992年)による。 |
シナリオ1: | 各種省エネ技術の導入が行われるが、自動車走行量は1990年比で40%増大ケースするケース。(技術対策シナリオ) |
シナリオ2: | 2010年の自動車走行量が1995年レベルに維持されるケース。 (走行量1995年維持シナリオ) |
シナリオ3: | 2010年の自動車走行量が1990年レベルに抑制されるケース。 (走行量1990年抑制シナリオ) |
シナリオ4: | 2010年の自動車走行量が1990年レベルより20%抑制されるケース。(走行量20%削減シナリオ) |
(7)自動車走行量削減策のメニューとその効果
A 旅客・貨物輸送共通施策
道路使用におけるHOV(多乗員車)優先策の徹底
*アメリカでは、2000年までに多乗員車レーンの設置延長を1990年水準の約2.5倍(約1365 km)にする計画が進められている。
都市部におけるロードプライシング(道路利用税)あるいは走行制限の実施
*効果の試算例:東京都区部+周辺3都市への流入時に、乗用車で200円、トラックで3000円の道路利用税を課した場合、乗用車交通発生・集中量の4%、トラック走行台キロの7.1%が削減される。[東京都自動車交通量対策検討会『自動車交通量対策の推進をめざして(最終報告)』1993年2月]
交通関係公共投資に関する財政システム(とくに道路特定財源制度)の改革
*アメリカでは、1991年の総合陸上交通効率化法の成立により、公共交通整備プログラムの資金の他、道路整備プログラムの最大6割まで、公共交通の整備を使用可能とする制度的枠組みが確立されている。
違法駐車対策、交差点の改良、交通管制システムの整備、ナビゲーションによる経路情報の提供等による自動車走行状態の改善(旅行速度の向上)。
*ピーク時走行速度が3大都市圏で25km/h(1992年比+39%)、地方都市圏で