「気候変動問題:市民にできること」

 



 
ハン・ジャウ?イン
気候行動ネットワーク・台湾
 

 

 多くの市民が気候変動(地球温暖化)と聞いて思い浮かべることのなかに、リオ地球サミットできわめて多くの国家元首の参加を得て署名調印された国際条約や、国連やその関連機関でこの問題に取り組む多くの専門家といったことがあるだろう。確かに多くの首相や大統領は条約に署名した。また多くの専門家がこの問題に取り組んでいる。けれども首相や大統領、そして専門家だけでは、この問題は解決できない。きわめて深刻な影響をもたらす気候変動を未然に防ぐために、市民には果たすべき決定的な役割があると言える。

 まず、市民は十分な情報を持たなければならない。気候変動問題は誇張されていて、その影響などひどく大げさに言われているというのは、本当なのか。今すぐ対策を取るのではなく、もう少し情報が揃うまで待つべきではないのか。対策を取るには費用がかかるのか、かかるならそれはどれぐらいの額になるのか。国内で対策を取ったとき、国際市場での競争力低下を招くのではないか。これからも顔を見ることなどない他国の人々のことまで、自分たちは心配しなくてはならないのか。自分たちがけっして知ることのない未来の世代のために、今日の私たちの利益を犠牲にしなければならない何か理由はあるのか。こうしたさまざまな疑問に自分で答えるため、政府や自治体、企業や研究者、あるいはNGOから、市民は偏りのない情報を手に入れなければならない。

 次に、市民は実際の取り組みに関わっていく必要がある。オゾン層破壊問題と異なり、気候変動は専門の技術者や官僚に任せておくことのできない問題である。二酸化炭素は気候変動を引き起こす主犯であるが、この排出量を減らすためには、私たちのエネルギーの使い方を根本的に変えることが必要になり、それは私たちの生活あらゆる面に影響を及ぼすことになる。交通や輸送の必要はどのような手段で満たせばよいのだろう。家の暖房や空調はどうすればよいのだろう。電気はどうして起こせばよいのだろう。エネルギー関連施設の多くはその寿命が長いので(例えば発電所の更新期間は40年である)、市民は事後の関わりだけでなく、それらの施設の設計段階から関わりを持っていくことが必要になる。地球温暖化から見て問題のある型の発電所を一度造ってから壊してしまうことは、問題のない型のものをはじめから建設することが可能であったなら、まったくの無駄ということになるからである。このまま放置すれば気候変動は私たちみんなに悪い影響を及ぼすことになる。同じようにこれを未然に防ぐためには私たちみんなの力が必要になる。政府や自治体、そしてNGOの取り組みも気候変動問題の問題の解決に一定の役割を果たす。けれども、全体として長期的な運命の鍵を手にしているの、他でもない市民なのである。