「気候変動問題の取り組みにおける東アジアNGOの戦略」

 


ハン・ジャウ・イン
気候行動ネットワーク・台湾
 

 

 気候変動問題はおそらく最大の環境問題であり、われわれ東アジアのNGOもこの取り組みにおける自らの役割を果たす決意を固めている。しかし、やみくもに走り出す前に、問題の本質を理解し、長期的視野に立つ問題解決が可能となるような展望を築き、東アジア独自の特性を考慮しつつ行動計画を立てるべきであろう。

 まずはじめに、問題の全貌を理解しなければならない。気候変動問題とオゾン層破壊問題の比較検討は有益であろう。共に似た性格を持つ地球環境問題であるが、問題の重大さにおいて違いがある。両者の比較検討から次のことが理解される。気候変動問題には、オゾン層破壊問題と異なり、即座に取ることのできる技術的対応は存在しないこと、長期的でおそらく何段階にもわたる対応が必要なこと、解決のための代償はきわめて大きくまた回避できないこと、などである。

 次に、気候変動問題の最終的な収拾にまで向かう対応の在り方とその時期について、確固たる展望を打ち立てることが必要になる。これは実に困難な課題であることを正しく理解しなければならない。大気中の二酸化炭素濃度安定化のためだけにでも、その排出量を90年レベルから60%以上も減らす必要があり、現在なお多くの北の国々(いわゆる「先進国」)では排出量の増加傾向に歯止めをかけることすらできていないのである。NGOは、実行可能な地球環境保全のための長期的シナリオを検討しなければならない。そしてそのシナリオは、化石燃料使用の段階的廃止促進、効率的な技術の継続的な開発と市場進出、南北間の資源移転の調整などの対応があいまって、21世紀おわりまでに世界の気候を安定させるものでなければならない。

 最後に、具体的な取り組みがなければ、どのように望ましいシナリオであっても、それが自動的に実現するわけではないことを指摘しておきたい。AANEA(東アジア大気行動ネットワーク)の行動計画を検討する際、東アジアのさまざまな特殊性を見失わないことが重要である。東アジアは現在、世界のどこよりも急速な経済発展を遂げている地域である。それ故、将来の温室効果ガス排出削減も、より厳しく困難な課題になる。AANEAの行動計画に対し、CAN台湾からいくつか提案をさせていただきたい。これらの提案が検討され、AANEAで結ばれたすべての団体や機関の間で建設的な議論が交わされれば幸いである。