「COP3に向けての日本のNGOの活動について」

 


 

吉村 純
市民フォーラム2001・地球温暖化研究会
 

 

 NGOの議定書案をつくろう!

 COP3は、地球温暖化を防止するための歴史に残る議定書を採択することになる極めて重要な会議である。日本で開催されるであろうこのCOP3に向けて私たち日本の環境NGOが現在重点をおいて取り組んでいる課題のひとつに、NGOによる議定書案の作成がある。ここでは、この議定書案に焦点を絞って報告したい。

 NGOの議定書案としては、すでにCOP1以前に発表されたグリーンピースの議定書案があり、私たちはこの案を高く評価しているが、新しい情勢を踏まえた議定書案を改めて作成することは意義が大きいと考えている。 NGOが議定書案を発表することは、各国政府の議定書交渉担当者に対するNGOからの強いメッセージであり、マスコミ等を通じて幅広い人々に対するNGOからのアピールでもある。議定書に関する関心を高め、 NGOによるロビー活動をより効果あるものにすることができ、議定書に関する議論と交渉を望ましい方向に導く力になると考えている。

 今年7月にジュネーブで開催されるCOP2までに議定書案を発表することを目指している。地球温暖化研究会だけの案とするよりも、CASA等の日本のNGO、さらに東アジアの多くのNGOの合同の議定書案としていくことが望ましいと考えており、各NGOからの意見を受けて改善し、完成させていきたい。
 

[現在考えている議定書案の骨格]

(A)「 CO2の大気中濃度は将来にわたって450ppmvを超えないレベルで安定化する」

(B)「(A)の安定化レベルは、人類の生存と食糧生産が脅かされず、生態系が気候変動に自然に適応し、かつ、持続可能な開発を可能とするものでなければならない。このことを踏まえ、科学的知見、影響評価の進展にともない、この安定化レベルを定期的に再検討する」

(C)「各締約国は、それぞれ2000?2035年までの各年の1人当たりCO2排出量を『1990年の世界のCO2排出総量÷当該年世界人口』のレベル以下に安定化する」

(D)「(C)の1人当たり排出量の目標は、将来にわたって(A)に定めたCO2大気中濃度の安定化レベルを超えないよう、定期的に再検討する」

(E)「2000?2034年の期間に(C)の目標を達成することが社会経済的に困難な締約国は、以下のそれぞれの期間においては暫定目標として、

[2000-2004年]2000年までに、 CO2排出総量を1990年レベル未満 に安定化すること
[2005-2019年]2005年までに、1人当たりCO2排出量を1990年レ ベルから20%以上削減すること
[2020-2034年]2020年までに、1人当たりCO2排出量を1990年レ ベルから40%以上削減すること

により(C)に代えることができる」

(F)「(E)の暫定目標は、気候変動に関する科学的知見や、CO2排出削減のための技術や社会構造の進展に応じて定期的に再検討する」
 

 ベルリンマンデートで「非附属書I国には新たなコミットメントは設けない」と決議されたことから、この議定書の成立当初は条約附属書I国が中心となると考えられ(ただし非附属書I国も自発的に参加することが期待される)、とくに(E)の排出削減目標は附属書I国を念頭に置いている。また、いわゆる「政策と措置」に関しても附属書I国に対する法的拘束力のあるコミットメントが必要であると考えている。

 議定書案の中でのCO2以外のガスの扱いについては現在検討中であるが、NGOの戦略としては当面CO2に集中することが重要であると考えている。