プレスリリース
 

京都議定書採択におけるCASAのコメント

抜け穴だらけの議定書は人為的な気候変動の防止に実効性はない

1997年12月11日
地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
 代表理事 山村 恒年
 

 12月11日、気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)は議定書を採択した。京都議定書が採択されたことは気候変動問題の解決に向けての第一歩といえる。

 しかし、この議定書は、目標が極めて低いだけでなく、多くの「抜け穴」を認めた妥協の産物で、抜け穴の運用次第によっては温室効果ガスの大幅な増加を許すものとなっている。

 残念ながら、人為的な気候変動の防止に実効性ある議定書とは言いがたい。

 その理由は、以下の通りである。
 

1. 付属書B締約国全体で6種の温室効果ガスを一括して、5.2%の排出削減率となっているが、この目標は極めて低いだけでなく、気候変動防止に実効ある目標としても不十分なものである。

2. 達成期限が2008年から2012年とされ、2005年という早期の対策を見送っている。

3. 今回の議定書には、削減対象に代替フロンなど(HFCs、PFCs、 SF6の3種類)が含まれたことは評価に値するが、ガスごとの削減目標は設定されず、科学的に問題ある包括型削減目標(いわゆるバスケット方式)が採用された。

4. 吸収の算入(いわゆるネットアプローチ)、共同実施、経済移行国との実体のない排出枠取引(いわゆるホットエアー)、クリーン環境メカニズムなど「抜け穴」の運用次第では、温室効果ガス全体としては大幅な排出増加を許しかねない。

 この議定書では、日本の削減率は1990年から6%となっているが、CASAの研究によれば、2010年までに技術的対応だけで8.1%、エネルギー消費量を1995年レベルに維持すれば21%の二酸化炭素の削減が可能となっている。

 日本が2%の人口で5%の二酸化炭素を排出する「北」の国で第2位の排出国であることを考えれば、日本政府は議定書の合意にとらわれず最大限の対策をとるべきである。

 CASAは、1988年の結成以来、気候変動枠組み条約の交渉にかかわってきた。今後も、世界や日本の環境NGOと協力して、気候変動の防止に力を尽くすつもりである。

  


地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)