日本政府は、本日、気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択される議定書に盛り込まれるべき温室 効果ガスの数値目標についての提案を公表した。
この提案では、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素について、2008年から2012年までの5年間の基本削減率を5 %とし、これを1990年の国内総生産(GDP)当たりの排出量、1人当たり排出量及び1990年〜1995年の人口増加率で差異化するとされている。さらに、将来の不確定要素によって柔軟性をもたせるものとされている。結局、この提案では日本は約2.5%、アメリカが約2.8%、先進国全体では約3.2%の削減になると報道されている。しかも、将来の排出量からの借入を認めるボロイングや、排出権取引、途上国との共同実施も認める内容となっている。
2008年から2012年までといった遅い時期に、先進国全体で1990年レベルの3.2%の削減などという目標は、真面目に地球温暖化を防ごうという姿勢がまったくない提案といわねばならない。将来の不確定要素との名目で、この目標も1990年水準を越えない範囲で改訂できるとされていることからすれば、結局、2012年に1990年レベルに戻るだけで、まったく削減されない可能性すら残されている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、「大気中のCO2濃度を現状レベルで安定化するためには、人間の社会活動によるCO2排出を、直ちに、60%以上削減する必要がある」と警告していることからすれば、今回の日本政府の提案は、地球温暖化を防止するどころか、明らかに温暖化を促進させる提案である。
COP3は、温室効果ガスを大量に排出し地球温暖化の原因をつくってきた先進工業国が、地球温暖化の防止のための第一歩となる実効性のある削減目標を合意するための会議である。議長国に予定されている日本政府には、地球温暖化の防止のための実効性ある削減議定書の採択に向けたリーダーシップが期待されている。また、世界第4位、先進工業国としては世界第2位の温室効果ガスの排出国として、地球温暖化を率先して防止する義務がある。今回の日本政府の提案はこうした期待に背くものであり、このような地球温暖化を促進する数値目標を提案をする日本政府に、COP3の議長を務める資格はない。
CASAでは、日本におけるCO2の削減可能性についての研究を進めてきた。CASAの研究では、エネルギー使用量や生活水準を1995年レベルに維持しても、導入可能な技術と適切な政策をとれば、2010年に1990年レベルから約20%削減できることが明らかになっている。今回の日本政府の提案が、通産省や産業界の「2000年以降も削減は極めて困難」との主張を反映したものとすれば、こうした主張は明らかに間違っており、この点からも今回の提案は撤回されるしかない。
地球温暖化問題は、人類の未来にかかわる深刻な環境問題である。地球温暖化を防止することは、将来の世代に対する、現在の私たちの責務である。CASAは、1988年から地球温暖化問題に取り組んできたNGOとして、日本政府がこの提案を撤回し、地球温暖化の防止に実効性のある削減目標を、国民合意のもとに提案しなおすよう強く求めるものである。