環境影響評価制度の法制化は、歴史の必然であり、何としても環境影響評価法が制定さ
れねばならない。
問題は、その内容である。
ここでは、中央環境審議会の設定する意見を求める事項にそって、意見を述べる。
「リオ宣言」の理念を受けて制定された「環境基本法」の19条も、「国は、環境に 影響を及ぼすと認められる施策を制定し、及び実施するにあたっては、環境の保全に配 慮しなければならないとしている。(但し、同20条の「環境影響評価制度の推進」で は、「事業実施アセスメント」にしか言及していない。)
こうした「リオ宣言」、「アジェンダ21」や「環境基本法」の基本理念からすれば
、国やその関連機関、国の政策・予算及び上位計画レベルでの総合アセスメントが不可
欠である。
すでに決定ずみの総合計画や都市計画についても、この計画の前提となった条件に変
化が生じたような場合は、新たなアセスメントが必要である。
また、政策、計画、事業と一連の手続で進行していく場合の各段階でのアセスメント
が分担する分野を段階別に分担分けする必要がある。(NEPA規制ではこれをティア
リングという。)
事前評価を行うためには、対象となる行為の内容、性質と環境に及ぼす影響、作用を まず的確に把握、分析して、評価のための実態調査の範囲、項目の決定の基礎を確立す る必要がある。
これ事前評価の前提となる最も重要な作業である。実態調査なくして評価はありえな い。現在の我が国のアセスメントの欠陥は、これを欠くか、また著しく不十分なことで ある。従って事前評価立法には、ある程度具体的に調査を義務づける規定をおくべきで ある。
評価された行為に代る代替案、計画された行為から生じる影響の分析の結果、マイナ スの影響をさけるための代替案が検討されなければならない。
環境事前評価に関して、環境保全水準を定めて行う方法とこれを定めない方法とがあ る。いずれにも利点と欠点がある。水準の定め方が問題であり、水準が汚染許容基準と なるおそれもある。また地域の実状を無視するおそれもある。現状では、一応の保全水準を考え、その有する利点と欠点とを十分認識したうえで、 地域の特質に即応して、これを流動的に運用することが望ましい。
環境事前評価は国民や地域住民の利益のために設けられた手続きであるから、それら に不利益を与えるか否かの事前検討の結果は国民や住民に広く公開される必要がある。情報が公開されることによって、知りえたすべての事実と評価の内容が、そのまま国 民、議会に提供され、公聴会や討議会での基礎となることによって、計画決定への幅広 い住民の参加を可能とする。資料の全面的な公開によって、地域の狭い利害関係を抑制 し、住民の意思を狭く解釈することにを防止する作用を果たすこととなる。
住民が事前評価の手続に参加することは、適正手続の法理の一要素であり、民主主義 の理念にそうものでもある。元来、住民こそが日々の生活の中で自然と健康の破壊を身 をもって感じ、それゆえにこそ快適な環境を享受する権利を誰よりも強く主張せざるを 得ない立場におかれているのである。
計画された行為に関係する地域の住民、関係市町村の住民、環境保全に利害関係を有 する団体、個人、専門家、エコロジストなどが含まれるべきである。関係する地域につ いいては、できるだけ広く設定されるべきである。
現状把握の段階における意見の聴取。計画された行為についての意見の聴取。調査結 果の公開段階での意見の聴取。評価素案報告書の公開段階での意見の聴取。
意見の陳述。申出。意見書の提出。事前の異議の申出。措置請求。公聴会。審議会で の意見陳述など。
意見については、その概要を記載し、採用しなかった意見については理由を告げるべ き。異議の申出については、行政不服審査法によって応答すべき。住民の意見が相当と 考えた場合は、これに従って見直し調査や評価がなされなければならない。
利害関係を有する住民は、公費で専門家を依頼する権利を確立する必要がある。住民 に依頼された専門家は、公的な調査研究施設、コンピューターなどを利用し、資料を請 求する権利が認められるべきである。
義務違反は違法性を構成し、差止の原因とされるべきである。影響評価書の公告、縦 覧の結果、再度の評価手続を求める制度を設け、その最終手続きが終了するまで、事業 決定を留保させるべきである。
事業実施において、なお評価の前提条件が守られているか、評価の条件に変更がなか ったか等について、監視、追跡調査が必要であり、変化に応じた事後評価、操業の停止 等を求める手続が必要である。
国・公団等の公共事業の環境影響評価も、地方の条例を優先して適用すべきである。
どのような環境を守るためにアセスメントを行うかについては、
現在および将来の人間と、その存立基盤である自然の生態系のために行われるべきも のである。従って、環境権に基づいて不十分なアセスメントに対する救済制度を確保す べきである。地球温暖化等、国際的な影響についても制度に取り入れるべきである。
土地利用に関係ある活動については、先ず、土地利用適正評価もしくは地域生態管理 計画に適合するような評価システムを構成すべきである。